09.01.22

「ホスト部一の、情けない男」 「はいぃっ!!」 「おいっ!なんでおれなんだよ!!!」 明けましておめでとうございます。 この度、新年はホスト部総出での新年会を行う事となりました。 全員で、体育館にて「大新年会」を開催中でございます・・・・・・ 【空色ピアノ短編小説 大新年会☆弱い男のそのココロ】 「さぁ!カルタ大会も終盤戦ですっ!」 「こっちの人間すごろくもそろそろおわるよーっ!」 いつもの如く、部長の二人が取り仕切る中、体育館では熱戦が繰り広げられていた。 参戦するのはホスト部のお客である女生徒達。 今回の大新年会は、豪華賞品が存在する。 そのため、いつも以上に熱のこもった戦いとなっているのである・・・ 「ねぇ、春琉。今回の事、結構危なかったよね」 「ま、まぁねー」 「はは・・・」 二人は顔を見合せて苦笑する。 そう。 今回のこの新年会は、部員達にあまりいい顔をされなかった企画だったのだ・・・ 〈二週間前・・・〉 「し、新年会?」 「そうよっ!もうお正月は過ぎちゃったけど、それでもやりたい物はやりたいじゃない?」 「けどさ、新年会って言ったってなにすんだよ?」 「それなんだけど・・・」 ちらりと、ケアクローバーの部長、春琉は廊下をみやる。 その場にいた部員達も同じように視線を向けると、そこにはもう一つのホスト部、ディアのメンバーが勢ぞろいしていた。 「んな・・・!」 「よぉ、ケアクローバーの連中」 「何しにここへ来たんだい?」 「それが・・・」 睨みあう健吾と真悟をよそに、エリルの質問にため息をつきながら説明を始めた。 「アイツら、とんでもない事考えてるんですよ」 「とんでもない事?」 「なんだよそれ」 「・・・新年会、です」 「新年会!?」 ケアクローバーのメンバーが声を合せて叫ぶ。 顔を見合わせ、何がとんでもないのかと目で訴える。 それに、今度は爽太が説明をし始めた。 「新年会の内容は良いんすよ。どっちかと言うと、面白そうなくらいなんです。 ・・・問題は、その後っすよ」 春琉と美保子は、男子メンバーの困惑を気にもせず、楽しそうに談笑している。 ため息交じりで、今度は健吾も説明に加わった。 「参加者は、日頃このホスト部へ来てくれている女生徒さん方。で、賞品が今回は用意されてんだ」 「その賞品なんだけど、実は・・・おれたちなんだよ」 「はぁ?なんだそりゃ」 「お客さんからの要望なんだと。だからって・・・一日デート券なんて相談なしに決めなくてもいいと思わねぇ!?」 健吾の叫びに、背後に美保子が現れる。 がっちりと肩を掴まれ、振り返る健吾に冷たいほほ笑み。 「・・・・・・はは」 「なにか?」 「文句でも?」 春琉が加わり、健吾は半泣き。 そこで反撃を開始したのは、何と健吾とは犬猿の仲である真悟だった。 「大アリだよ春琉!」 「な、何よ真悟までっ!」 「おれは嫌だからな!」 真悟はそのまま部屋を飛び出し、呆気にとられる春琉と美保子を残し、他のメンバーも部屋を去ってしまったのだった。 だが、しん、と静まり返った室内に残った女子二人が・・・ 諦めるわけが、なかった。 【ターゲット・その1】 「しーんごっ」 「・・・何だよ春琉。言っとくけど、今回は健吾がどうのって言ったって無駄だぜ」 「わかってる。でも、一個だけ、いい?」 「なんだ?」 真悟が顔をあげると、目の前に出されたのは春琉の笑顔と・・・一枚の紙。 「・・・なんだ、それ」 「特別チケットだよ」 「と、とくべつ・・・?」 「そ。ほら、見てみて!」 真悟が手に取り、目を凝らす。 ・・・どうやら、気のせいではないらしかった。 「ここ、これっ!」 「たまにはいいかなーって。でも、真悟は今回不参加だしね・・・残念だけ「やる!」 「・・・え?」 「参加するぜ!今回の企画に参加すればもらえるんだよな!?」 「う、うん。あげちゃうよっ」 「うっしゃー!燃えてきたぜぇぇ!!! 任せろ春琉!他の連中もおれが説得してやる!」 「出来なかったらそのチケットは没収だよ?」 春琉の笑顔は、真悟にとっては何よりのエネルギー。 だが、本当の意味は限りなく・・・「黒」いモノである。 【ターゲット・その2 光】 美保子の前に、光は自ら現れた。 爽太や健吾に言われ、美保子を説得しに来たのだ。 陰で二人を見守る爽太達だったが、声までは聞こえないらしい。 「・・・うまく、行くかな」 「さぁ」 「さ、さあって・・・光は美保子に惚れてんだぞ!?」 「それは大きな問題かもです」 「のわっ!ささ、皐月」 「・・・確かに」 「なぁ、美保子。今回のゲームは・・・」 「うん、わかってるよ。みんな、やりたくないよね」 「・・・つーか、お客さんへの賞品が、だろ」 「光も、嫌?」 光はためらいつつも、素直にこくりと頷く。 彼の場合、目の前に自分の好きな美保子という人物がいるのだ。 他の女生徒とのデートなど、あり得ないのだろう。 「じゃあ、さ」 そう言って、美保子は一枚の紙を光につき付けた。 「ゲームやってくれたら、これ、プレゼントしちゃうけど」 「な、なに・・・コレ」 「わたしとのデート券だよv」 「は・・・?」 「え、いらないの?」 光は勢いよく首を振ってそれを否定する。 デート券を取ろうとした光からさっとそれをかわし、美保子はにっこりとほほ笑んだ。 「欲しかったら、あそこの三人、説得してね・・・?」 「・・・・・・任せろ」 恋に囚われた二人の阿呆な男が、惚れた弱みに付け込まれた見事な瞬間であった・・・・・・ 「えっと・・・どうするの?」 「なにが?」 「コレ終わって、真悟がデート終えたら、わたし、真悟とデートすんの?」 「当たり前でしょ!きっと春琉の為ならおいしいものいっぱい食べさせてくれるってー!」 「そ、そうかな?」 「そうだよっ!わたしも、欲しかったCD光に買ってもらっちゃおうかなー」 そんな二人のひそかな計画もつゆ知らず、二人の男は必死にゲームをこなしていた。 それに巻き込まれた形の他のメンバーも、深いため息をつきながら参加中・・・・・・ 「・・・つーかエリル」 「なんだい?健吾」 「何でお前がこの企画に反対だったんだよ?」 「そりゃあ決まってるよ」 「?」 「誰か一人のモノだなんて、僕も女の子たちも不幸じゃないか」 「あ、そ・・・・・・」 考え方は人それぞれ 健吾の脳裏に深く刻まれた言葉だった・・・・・・